5月19日、私が「文学フリマ」に金井雄二さんと一緒に行ったというXへの投稿に、岡和田晃さんが「金井雄二という『詩人』は、いばらき詩祭で佐賀を侮辱する発言をしていました」とコメントし、その詳細へのリンクも教えてくれました。同様のやり取りは、Facebookで細田傳造さんとの間でもなされています。このブログはほとんど読まれていませんが、XやFacebookで長い文章を載せることは、私は避けていますので、岡和田さんのコメントに対する私の考えをここに書かせていただきます。
金井「都道府県魅力度ランキングで茨城県最下位脱出おめでとうございます。47位は佐賀県ですからね。あそこは吉野ヶ里遺跡や佐賀牛等しかないし、あそこには勝てるでしょう」
岡和田「百歩譲って、神奈川県民の金井氏が茨城会場で茨城をいじるところまでは我慢できる。しかし、なぜ佐賀を見下すのか。佐賀は玄海原発を押し付けられている地域である」「私はわざわざ地域蔑視を聞かされたり同意させられるために、詩祭に参加したのではない。言葉に意識的であるべきというなら、なおさらだ」
私は金井さんとは、長い付き合いですので、そのことについての私の考えを、このブログで述べます。
まず大前提として、私は岡和田さんの佐賀県に対する認識、態度に賛同する者である、ということを述べておきます。岡和田さんの真っすぐな視線ゆえに、金井さんのその発言は敏感に反応したのだろう、と思いました。
その上で、私なりの捉え方を2点書きます。
私は金井さんとは付き合いも長く、一緒に同人誌もやっていますので、その人間性は理解しているつもりです。ゆえに、金井さんの性格からして、誰かをあるいは何かを貶めようとするようなことはない、と断言していいと思っています。彼の人生に対しての誠実な態度は、これまでに彼が書いてきた文章や詩を読めば伝わってきます。その彼の発言ですので、決して悪意からではない、と考えます。
「都道府県魅力度ランキング」は、ブランド総合研究所という民間会社の調査で、一面の事実は示しているかもしれませんが、そのこと自体を過剰に信じることは、その会社の社名同様、各県を「ブランド」化し、ランキングを金条化してしまうことになります。ですからその順位は適当にあしらう方がいいと私は考えます。1位が不名誉である、という捉え方も成り立つわけです。金井さんの発言は、(金井さんがそのことを意識しているいないは別にして)ランキングを相対化しています。もっと言えば、ブランド化されない茨城と佐賀に対する愛情表現であるとも考えられます。某県知事(最近辞職しました)が選挙の応援演説で「あちらの市は〇〇しかないが、こちらには△△などいろいろある」というような発言をして顰蹙を買いましたが、あちらとこちらを敵味方に分けて片方を陥れようとした舌禍事件とは意味が異なると思います。対立を煽る場での発言ではないからです。ランキングを茶化しながらの親愛表現だろう、と私は思ったのですが、どうでしょうか。
ただ、それでも「その言葉を聞いた佐賀県の人は嫌な気持ちになった人もいるだろう。他人の気持ちへの配慮に欠ける」と言われるかもしれません。これも全くその通りで、金井さん同様「ほんの前フリのつもりでしたが……すいません」と言うしかありません。
ただ「おまえもまた意識が低い」と言われるのを承知で言うならば、どうも昭和世代、特に30年代より前世代のオジサンたちは、現代の〇〇ハラスメントや〇〇差別に引っかかってしまうコミュニケーションの取り方をしてしまう、という習性が強いように思うのです。3月、NHKラジオに、俳優で歌手の武田鉄矢がゲストで出演して、脳科学者の黒川伊保子と対談をしていました。そのとき武田が「どうも昭和生まれの僕たちのコミュニケーションの取り方では生きづらくなってしまった」と嘆いていたのを聞きました。冗談が冗談でなくなってしまったり、逆にハラスメントや差別に取られてしまったりして、失敗したり炎上したりすることが多くなったと、武田は反省しながら困惑もして相談していました。
確かに、コント55号やドリフターズで育った世代は、ギャグが親しさの表れ、コミュニケーションの手段であったことも多かったように思います。が、それは現代では許されない。多様性、ジェンダーフリーを認めていく時代であるからです。私は昔はよかった、ということを言おうとしているのではありません。昭和生まれの人間は、ついついそういうコミュニケーションの取り方をしてしまう、ということなのです。金井さんの場合も決して「侮辱」ではなく、古い世代のコミュニケーションとしての「前フリ」だったのだろう、と同世代の私は思ったわけです。
そういう時には「おいおい、伊藤さん。それは今は通じないよ」と叱っていただければいい。私も差別意識はなくても、そんな冗談を言って失敗してきているからです。そして、それが「差別意識」を生み出すのだ、と指摘されれば反省していかなければなりません。
ですが、そのことによってその人物やその人物の仕事を否定することはできないと思います。その人物の全体像、生き方から、その発言を捉えてほしいと思った次第です。金井さんの「詩人」としての仕事は、やはり輝いています。同様に、岡和田さんの意識というのは、とても大切ですし、忘れてはいけないものだと思います。
改めていろいろ考えました。
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